YOCSです。東京の例会に参加された方はお疲れ様でした。
前回予告していた通り、今日はこれまで勉強会で報告された個人発表の要旨をご紹介したいと思います。今日は3名。「投稿論文」の応募を前に、我々が普段どんなノリでやっているのか知るヒントとなれば幸いです。
まずは第6回で発表された大内さんの要旨から
大内康治 「折り紙創作の困難さ」 |
近年、折り紙創作はいくらか一般にも認知され、創作を始めようとする者が増加している。 その一方で、折り紙の創作手法は初心者にはなじみにくいのか、挫折者が多く、普及が進んでいるとはいいがたい。 また、創作の難しさの定量的評価はほとんどなされていないため、どの程度の覚悟をもって挑むべきかが認識されにくい。 本発表では、創作という行為をアルゴリズム的な観点から解釈し、その難しさについて議論する。 また、困難さと設計手法の有効さを示す例として、発表者が開発したソフトウェアを用いて、一つのカドを折り出すパターンの数え上げを行う。 |
折紙の創作について考えた、ある意味たいへん正当(?)なテーマです。我々勉強会としても、こうした「どうすれば折紙の創作がやりやすくなるのか」という問題に対する、多くの方の考えをぜひ求めていきたいと考えています。
なお、要旨にある「ソフトウェア」は、実際に報告者の大内さんが作ったものですが、発表時は試作でした。勉強会の報告ではよくあります。
今回の投稿論文でも、「こんなことをしている/考えているんだけど、まだまとまってない段階」でも一向に構いません。一度自分なりにまとめて外に出してみることで、見えてくるものもあるでしょう。勉強会はそういう場として活用してもらうことを望んでいます。
ということで、2つ目も試論です。
高村侑樹 「距離としてのぐらい折り」 |
距離というものには実は数学的な定義があります。その定義を使うと数学的に折紙作品の間の距離を測ることができます。 今回はぐらい折りによる距離をどのように考えるかという点、またそれを考えることにより作家からの影響を測れるのではないかという仮説について発表いたします。 |
「折紙の距離」というのは高村さんのいわばライフワークです。彼の所属する東工大FITで発行されている部誌でも、この論は継続的に取り上げられています。
内容は本格的な数学の議論に足を踏み入れている部分もあるので難しいところもありますが、質疑応答の結果「折り工程の距離」ができるかも、という話にまで膨らんだりもしました。こうした応答による議論の展開は、発表の醍醐味といえるかもしれません。
やや数理系が続いてしまいました。3つ目は毛色の違うものを一つ。
萩原元 「自作品の折り図製作の変遷と今後の課題について」 |
2007年に初めて手描きで拙作「カンガルー」「白鳥」の2作品の折り図を製作して以降、(2014年1月現在)未発表の物も含めて22作品を折り図化してきた。当然ながらこの7年で私の折り図を描く技術は少しずつながら最適化され、同時に自身の創作活動における折り図製作の持つ意味・意義も変化していったように思う。 最初の折り図を描いた際の動機は「他人から求められたから」と「有名な作家は皆折り図を発表しているから」の2点だった。これはとても受動的な動機であり、自身の意思の介在しない作業だった。しかしながら数作品を折り図化した時点でなぜ図を描くのか、自分は折り図を通して何を伝えたいのかを考えるようになったのだ。 本発表では上記の作図法と意識の変遷と今後のぶつかるであろう課題を、初期から最近の折り図の対比および実際の作図風景を交えつつ解説する。 |
先月メルボルンの折り紙事情を発表してくれた萩原さんの、一度目の報告要旨です。「折り図を描く」ということが、彼の中でどのような意味を持っていったかを話してくれました。折り紙の活動には、創作以外にも様々な要素が存在します。投稿論文も、このように必ずしも創作に絞った内容でなくとも大丈夫です。
実際の発表では、スクリーン上で萩原さんが折り図を描きながら、どのようなツールを使っているかなども紹介してくれました。こうしたテクニック集も、歓迎します。
次回は別の方の要旨をお知らせします。
「研究ノート投稿論文」の応募締め切りは今月末までです。ご興味のある方はぜひ[young.origami.creators.seminar@gmail.com]までどうぞ。