日時 | 2017年5月21日(日)14:00-18:00 |
会場 | JOASホール |
参加者 | 5名 |
今回は、「折り紙創作の妥協の仕方」に関する討論と、折りゴミ品評会を行いました
1.討論 「妥協の仕方」
1.1.目的
前回の勉強会で創作教科書について議論した。その中で、創作における妥協の重要性が話題に上がった。今回は、この妥協の仕方について、詳しく議論していきたい。
1.2.議論内容
原司さんの報告をベースに議論を行いました。最初に原報告の要旨を紹介します。
創作には大きく2通りの過程があると考えられる。
1.折りたい対象(課題)がある→構造(仕上げ表現含む)を考える→試行錯誤→完成 2.見立てを見つける→試行錯誤→完成 どちらの場合も詰まるのは試行錯誤の段階だと思われるので、妥協が必要になるのは試行錯誤だと思われる。ただし、折りたい対象がある方が妥協が難しく、見立てから始まっている方が妥協はしやすい。 |
その後の議論では、上の2つの分類の他に「この構造ならあの対象が折れる」という「ある対象と折り線の構造が直感的にマッチングする」というから創作が始まるという意見が参加者から出、「対象と構造のマッチング→試行錯誤→完成」という3つ目のフローチャートが示されました。
また、フローチャートにおける「対象」は、創作の目標、あるいは「こう折りたい」という課題の意味に拡張したほうが良いという意見が出ました。
そこから、適切な妥協とは、目標の適切な組み合わせ方と捉えなせるのではないかという議論になりました。言い換えると、妥協ができずに完成に至らない作品とは、現実には不可能・実現が難しい目標の立て方をしているために、完成に至らないのではないかということです。
一方で完成させるために目標を削ると、創作者の満足度が下がってしまい、達成感を得られなくなります。達成感を得られぬ創作を続けていると、いずれ折り紙の創作自体への興味を失ってしまうでしょう。
満足度を下げずに妥協をするにはどうしたら良いでしょうか。一例として、初音ミクが上がりました。大きなツインテールを独立したカドで折ろうとすると、髪の根元や首が厚くなってしまいます。ここでツインテールをカドで折るのを諦めるか、厚みを我慢するのが普通の妥協です。しかし、ツインテールのカドを肩や背中からT字状に出して、頭頂部で繋げると根本の厚みの問題を解決することができます。こういうカド配置の工夫を知っていれば、ただ一方の目標を削るだけでない妥協ができるのです。
一方で、この「髪を胴体から出す」という方法は髪のカドが体の一部と接触するという新たな問題を生みます。髪の毛をなびかせた初音ミクをイメージしていた創作家は、新しいジレンマに悩むことになるでしょう。
こうした技術的な解決法の組み合わせと設定した目標群を照らし合わせながら、創作家の満足度が最大に近づくように工夫するのが、創作における妥協だと考えられます。上の例で言えばをツインテールを綺麗に折りだす解決法として複合や異型用紙・切り込みという工夫は当然あり得ます。これは、創作者がこういう解決法を一切に念頭に入れていない場合もあるでしょうし、満足度の低下を理由に採用しない場合もあるでしょう。逆に言えば、切り込み等を使うことによる満足感の低下を上回るような何らかの効用を得られれば、合理的な観点では採用すると思われます。
妥協ができずに創作が行き詰まっている人の中には、目標が多すぎたり、(今回は)削ってよい目標と譲れない目標の優先順位がつけられていない人がいると考えられます。先月の「創作競作」で使用した「目標設定シート」は、こういうタイプの問題を抱えている人が活用できるようにすべきでしょう。
その他関連する議論として、以下のものが論点となりました。
・作品の完成率について
創作が完成にまで至る確率と、上のフローチャートの分類ごとにどの程度完成率に差があるかを参加者で議論しました。
折りたい対象がある場合、実際に構造を考える段階に至ればほぼ完成するというのが、多くの参加者の意見でした。ただし、潜在的に折りたい対象(「これを折るぞ」と決心して、実際に紙を手にとって作業始めるにまで至らないもの)まで含めると、完成率は10%以下に下がるのではないかと考えられます。
また、「対象と構造のマッチング」から始まる場合は、マッチングをひらめいた場合はほぼ完成に至るという意見が出ました。いずれにせよ「折れる」という直感が働くことが重要なようです。
・折り紙創作の教科書における「創作折り紙」の範囲はどこまで含めるべきか
教科書に関する議論も幾つかありました。一つは三谷純さんが行っているような折り紙を教科書に盛り込むかという議論でした。これはどこまでを教科書の範囲として取り込むかという範囲を考えることでもあります。
取り入れるべきという意見は、「現代のメディア露出などを見ると、ああした折り紙の方が今後認知度が高まっていきつつあるので、創作してみたいという人も増えるだろう。少なくとも最初に取り上げて、どうすれば学べるかを提示することは必須だ」というものでした
反対する意見として「教科書として範囲が広まりすぎてしまう。最初にこの教科書が取り扱う範囲を示した上で、特定の種類の創作折り紙に内容を限定するべきではないか」というものでした。
折り紙には他にもユニット・テッセレーション・複合作品など様々なジャンルがあります。勉強会が全ての折り紙に精通しているわけではありません。自分たちの取り扱う範囲は、いずれ考えておくべきかもしれません。
・創作を始める時に最初に教える項目が何が良いか?
妥協の話の中で、「創作してみたいが目標も折りたい対象もまったくない人」にどう対処したらよいかという話になりました。
そこから、創作を始めるにあたって最初に教えること、言い換えれば教科書の冒頭にどういう項目を置くべきかという話になりました。例として上がったものは以下のとおりです。
・折った作品を開かせる。
・既存作品のアレンジ。
・基本形をいじらせる。
・ジャバラで昆虫など、ごく基礎的な設計をさせる。
・展開図を折らせる。
・何回か折ってできた形を見立てさせる。
他にも色々考えられると思われます。ぜひご意見ください。
2.折りゴミ品評会
2.1.作品(?)紹介
原 司 | |
堀口 直人 | |
高村 侑樹 | |
2.2.議論内容
折りゴミのうち、今後発展させられそうであったり、一つの作品として完成させられそうなポテンシャルを持つものはどれかなどについて、話し合いました。
次回は6月24日(土)・6月25日(日)のどちらかを予定しています。
内容は、以下のものを予定しています。詳細は後ほど告知でお知らせします。
「折り紙学(西川誠司著)」を読む
演習「集団創作+パーツ創作」
みんなで動物の手足頭を一つずつ折って、一つの作品を作ってみる演習です。
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