第28回(再開8回)若手創作家勉強会 活動報告

日時 2017年4月30日(日) 14:00-18:00
会場 JOASホール
参加者  7名

報告が遅れて申し訳ありません。今回は、以前より呼びかけていた「アルパカ」の創作競作と、創作教科書に関する議論・活動の振り返りを行いました


1.企画 「第2回創作競作『アルパカ』報告会」

1.1.目的

本企画は折り紙創作における各作業過程において各々の創作家がどのような目標を意識的・無意識的に設定し、それが実際の作業の中でどのように変化しているかを考察し、比較することを目的としている。創作のアプローチは千差万別であるが、作業の各段階で目標を立てるという行為自体は共通していると考えられるから、それでもって創作時の思考法の変遷を比較検討できるとの仮説に基づいた。

今回の勉強会では「アルパカ」というお題で有志に実際に創作してもらい、その際の試作や目標設定の変化を示したアンケートなどを報告してもらった。そこから折紙創作における目標設定法の共通点や相違点(これは各自の個性や作風とも言える)を探った。

1.2.実施内容

メール参加含め5名が折ってきた。提出された創作レポートおよび目標設定シートは以下の通り。

加藤 駿

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大河 寛

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井上 岳哉

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田中 幹人

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笹沼 勇人

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1.3.成果

今回の議論で検討されたのは以下の通り。

・創作時の目標にはその変化の仕方でいくつかのタイプに分類できるのではないかと考えられる。目標には途中で変化するものと変化しないものがある。

そのうち変化する目標は「創作する上で難所となっている部分」と「(その創作者にとって)あまり重要でない目標」に分けられると思われる。前者は作品の完成を左右する部分で、創作者のこだわりと強く関連している。後者は逆に創作者にとってこだわりのない部分で、最終的に放棄されたり、加えられたりする。

変化しない目標については深い議論には至らなかったが、「創作者にとっての譲れない目標(≒強いこだわり)」あるいは「無自覚の目標・自明となっている目標」などが予想される。

・目標シートについては、普段無意識にやっていることを意識的に書き出すこともあってか、難しいという意見が多かった。一方で試作を含めて創作過程を記録しておくことの重要性を再認識できたという意見もあった。

・以上のことから、創作時の目標を意識的に記録するという今回試みた手法は、創作を初めてやってみるというタイプの人には作業の難易度が高く、負担も多いため不向きと言える。一方で、知らずうちにこだわりを詰め込みすぎて頓挫している作品や、やりたいことが多くて折れなくなっている創作中上級者に書かせることで、目標の多さを自覚し、こだわりを切り捨てるためのツールとして活用できるのではないかと考えられる。


 

2.討論 「創作教科書に関する議論・活動の振り返り」

2.1.目的

SNSで創作の教科書を作るという議論がなされていた。一方で、創作教科書はYOCSが開設当初に立てた理念でもある。こうした理念がうまく外部に伝わっていないのではないかと考えられる。過去に行った活動を振り返りつつ、広報活動のあり方について討論をした。

また、教科書作成にあたって今考えておくべきことについて議論を行った。

2.2.議論内容

・広報について

ブログでの活動報告を強化する。具体的にはブログのカテゴリー欄を細分化し、内容に基づいて活用していく。

カテゴリーは以下のものを増やした。

「創作力の向上」

関係するこれまでの活動内容……即興創作演習(基本形から折る・パーツ制作・折紙しりとり等)・集団創作?

「創作手法の体系化」

関係するこれまでの活動内容……競作・個人報告のいくつか

「知識共有・データ収集」

関係するこれまでの活動内容……本の紹介・作品紹介・個人報告のいくつか

カテゴリーの詳細は、「活動の概要」として固定ページに記事を作成した。

 

・折り紙創作教科書に関する議論

以下のトピックについて議論した。結論は出ていない。これを読んだ折紙愛好家の方もぜひ一度考えてみてほしい。

・教科書が想定する読者とは?

教科書を作成するとして、どの層にターゲットとするのか事前に考えねばならない。折紙の普及を目論むには折紙に初めて触れるような年代の子供をターゲットにする戦略もあるが、これまでのYOCSは概ね「ある程度折紙は折れて、創作してみたいと考えているけれど、創作できない人」をターゲットと想定していた。

そうした「創作してみたいけれどできない人」は、「明確に折りたいものがあるけど近づけない(折れない)人」、「なんとなく創作してみたい人」、「理想が高すぎる人」などに分けられる。

それぞれのタイプが必要としている情報や支援は異なると考えられるので、それを前提として教科書を作らないといけない。

例えば今回行った「目標シート」は、「理想が高すぎる人」が妥協の道筋をつけるための道具として役に立つかもしれない。いわゆる技法や理論などとは異なるアプローチもタイプごとに考える必要がある。

・創作への足がかりに適したものは何か?

先述した「創作してみたいけれどできない人」は、折り図などの媒体を通して様々な作品を折れる人である。そうした人を創作へと引き込むには、どのような方法を勧めるべきか。

議論の中では、「拡張・アレンジしやすい基本形や作品を紹介し、色々なアレンジ方法をやってもらう」「逆に複雑な作品を簡略化して、色々いじってみることで感覚を養う」「一度折った作品を開いて、どうやってできているか探る」「1回か2回折った紙を、とりあえず何かに見立ててみる」などがあがった。

・折り紙の楽しみ方とは何か?

創作の教科書を作るのは、結局のところ折り紙の楽しみ方の一つを知ってもらうためである。では現在の折り紙の楽しみ方とは何か。古来「折り紙のパズル的な楽しみ」や「自分の作ったもの、折れるものを他の人に折ってもらう楽しみ」などが例として語られてきた。

しかし折り紙そのものの発展と創作家の増加によって、折り紙の楽しみ方にも多様になっていると考えられる。「折り紙はいろんな楽しみ方がある」ということを伝えるために、そうした多様性を知らなければならない。

 

YOCSは現在参加人数の低迷から、こうした論点に関する若い人(特に学生)の考えが分かっていない。要するに情報が足りていない。それが教科書作成に至らない原因となり、足踏みしている状態である。

本稿をきっかけに、こうした議論が多くの場所で増えることを願う。

 


次回は今回の議論を踏まえ、「創作における妥協の仕方の検討」と「折りゴミの品評会・」を実施する予定だ。

 

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